労務費転嫁交渉指針の認知度向上と適切な価格転嫁の定着が課題

 

 公正取引委員会が労務費転嫁交渉指針(2023年11月)のフォローアップ調査の結果を公表しました。

 2023年度調査の結果、コストに占める労務費の割合が高いこと又は労務費の上昇分の価格転嫁が進んでいないことが判明した「労務費重点21業種」を含む43業種の事業者11万名に対し、労務費転嫁交渉指針に沿って行動しているか、コスト上昇分の価格転嫁が適切に行われているかなどについて、受注者・発注者の双方の立場での回答を求める調査票を2024年6月に送付して行われました。

明らかとなった課題

  • 労務費転嫁交渉指針の認知度が約50%にとどまっているところ、同指針を知らなかった事業者において労務費の価格転嫁が低調である。
  • 労務費の転嫁率は、サプライチェーンの段階が遡るほど低くなり、価格転嫁が十分に進んでいない。
  • サービス業のサプライチェーンにおいて、サービス提供業者(元請)や各段階の受注者がその先の取引先受注者からの価格転嫁を受け入れるための 原資となるサービス提供業者(元請)から需要者(事業者)への価格転嫁が十分に進んでいない状況がうかがわれる。
  • 通常調査の回答者数に占める注意喚起文書送付件数の割合の低下が緩やかになっており、依然として協議を経ずに取引価格を据え置いている 発注者が存在する。

 

今後の取り組み(抜粋)

  • 労務費重点21業種や、多重委託構造が存在し、かつ、価格転嫁が円滑に進んでいないことがうかがわれる業種について、積極的に端緒情報を収集するとともに違反被疑事件の審査等を行い、独占禁止法や下請法上問題となる事案については、事業者名の公表を伴う命令、警告、勧告等の厳正な法執行を行う。
  • 新たな商慣習としてサプライチェーン全体での適切な価格転嫁を定着させるため、下請法について、コスト上昇局面における取引価格の据置きや荷主・物流事業者間の取引への対応の在り方、事業所管省庁と連携した執行強化のための当該省庁の指導権限の追加等に関し、改正を検討して早期の国会提出を目指す。

 

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