トラック部会第21回中央労使懇談会を開きました

 交通労連トラック部会は7月13~14日の日程で、トラック運輸産業のあるべき方向及び当面する諸課題について、労使で意見交換を行うことを目的に「第21回中央労使懇談会」を新潟県「新潟グランドホテル」で開きました。

 労使懇談会には企業側17社、労働側25労組、56名が参加しました。

 懇談会前には、東海大学の川野辺弘幸客員教授から、「今後の日本経済の展望について」をテーマに、①日本経済の現状②トランプ政権と日本経済③世界経済の動向④物流・運輸産業の今後―について講演をいただいた。

 講演で川野辺教授は、「現在はスマホの急速な普及やセンサーの低価格化、人工知能の登場など、第4次産業革命が来ていると言われている。物流・運輸業界も自動運転などの進展により、大きく変革する可能性が高い」と述べました。

時間外労働の上限規制の猶予期間の短縮を求める

 続いて、労使との懇談にうつり、主催者を代表して座長の山口中央執行委員長があいさつに立ち、「トラック部会の中央労使懇談会は今年で21回目になる。ご多忙の中、多くの労使が参加いただいたことに感謝を申し上げるとともに、開催にご尽力いただいた信越地方総支部の各加盟組合や企業にお礼を申し上げたい」と感謝を述べた後、

「時間外労働の上限規制について、自動車運転者への適用に猶予期間を設けられたことは理解できるが、5年というのはあまりにも長いのではないか。

 さらに時間外の上限時間が一般則の720時間と比べ、960時間というのも問題だ。特に心配しているのは長時間労働の産業と認識され、労働力不足が解消されないことだ。一方で中小企業を中心に上限規制に反対する声も多いと聞いているが、労働力不足を解消するためには、長時間労働の是正に取り組んででいかなくてはならない」と述べました。

物流業界が社会インフラとして再認識されている

 次いで、企業側を代表して中越運送㈱の渡辺忠雄専務取締役があいさつに立ち、「交通労連の中央労使懇談会を新潟で開催していただいたことに、感謝申し上げたい」と述べた後、

「物流については大別して2つの課題がある。1つは国内貨物量の減少傾向が続いていること。2つ目はドライバーを中心とした労働力不足だ。こういう状況の中、宅配の最大手企業のドライバー不足や運賃値上げ等が大きく報道された。

 物流業界が社会から大きく注目され、物流が社会のインフラとして再認識されてきている。働き方改革について、5年間の猶予期間が設けられたが、企業側としても荷主企業に理解をいただく期間が必要ではあるが、スピード感を上げて実現していくべきと考えている。運賃値上げについても、大手企業を中心に値上げを発表しているが、社会全体に拒否感や抵抗感はなく、荷主企業も理解いただける雰囲気と感じている。今後、中小・地方の運送会社にも運賃改定、労働条件の改善の方向は波及していくだろう」と現状の動向と見通しを述べた後、

「自動運転や作業ロボットの導入など、必ず物流は今後大きく変革していくことが想定される中で、労使でこのような議論をする場を設けることは大変貴重な機会であり、真摯な議論をお願いしたい」と述べました。

 続いて、トラック部会の貫事務局長から部会の産業政策と取り巻く諸課題について、政策要求の内容を交えながら説明した。

 引き続き、5月20~29日にアメリカで行った2017年度海外物流事情視察について、団長でもある中越通運㈱の阿部常務取締役から、ニューヨークを皮切りに首都ワシントンDC、ロサンゼルス、サンフランシスコなど6つの視察先の視察内容の報告を受けた後、次年度も開催することを確認しました。

 次いで、次年度の労使懇については、幹事企業となる第一貨物㈱と相談しながら開催場所や時期などを検討していくことも確認しました。

労使で活発に意見交換を行う

 意見交換に入り、「トラック運転者の働き方改革について」を懇談テーマに山口中央執行委員長から、「労働生産人口が減少し、労働力の確保がより難しくなることが想定される。そのような中で各企業において、どのように労働力の確保及び働き方改革に取り組んでいこうと考えているのか報告いただきたい」と問題提起と意見交換の目的を説明した後、各社より報告をいただいた。

 各企業からは、

「5年間の猶予期間は率直に長い。今回の働き方改革の取りまとめの中で、長時間労働産業としてレッテルを貼られたのが実態であり、採用に大きく影響が出てきている」

「手待ち時間の短縮には、荷主企業との調整や理解が必須だ。もっと荷主企業に物流業界の実態を理解いただくよう努力していく」

「定着率を高めるため、新卒者は遠方への転勤を当初三年間は凍結したり、研修制度の充実化を図っている」

「各事業所に具体的な取り組み提案を募集し、提案を採用した場合は本社が実施のための支援を行う仕組みを設けている」

「免許取得支援制度を改定し、個人負担を出来るだけ少なくした」

――など、多くの取り組みが報告され、労使で意見交換を行った後、今後も労使で知恵を出し合いっていくことを確認し、成功裏に終了しました。

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