判決に対して 上告も検討する
公正取引委員会が新潟交通圏のタクシー会社に対して運賃カルテルを行ったとして排除措置命令・課徴金納付命令を出した問題で、公取委審判結果を不服として新潟市の複数のタクシー会社が取り消しを求めていた訴訟の判決が9月2日にありました。
判決結果は、「原告の請求をすべて棄却」という残念な結果となりました。
原告側代表の新潟県ハイヤー・タクシー協会の高橋良樹会長は、「これまで闘ってきた五年間は何だったのかというのが率直な気持ちだ。上告も含めて、関係者と相談して決めたい」と述べ、交通労連信越総支部ハイタク部会の伊丹部会長も「法律を守った者が何故罰を受けるのか。憤りを覚える」と述べました。
カルテル認定には憤りを覚える
開廷後、裁判長より「原告側の請求を全面棄却する」と判決結果が述べられた際、原告側事業者および労働組合等の関係者の多くが落胆しました。
閉廷後に弁護士会館で開かれた事業者および労働組合の関係者による判決に対する集会では、交通労連信越総支部ハイタク部会の伊丹部会長(全新潟タクシー労組)は、「この問題については、われわれ労働組合は職場と雇用を守る観点で取り組んできた。ハイタク業界は中小零細企業ばかりであり、国土交通省から指導があれば、それに従うのは普通であり、それがカルテルと認定されたことに憤りを覚える。法律を守った者が何故罰を受けなければいけないのか。司法までこれを認める判断を下したことに落胆している。今後については分からないが、これまで約五年間、一緒に闘ってきた関係者の支援に感謝したい」と述べました。
次いで、全自交労連新潟地連が判決に対する意見を述べた後、原告側代表の新潟県ハイヤー・タクシー協会の高橋会長があいさつに立ち、「判決の結果にあきれ返った。タクシー業界を適正化および活性化することを目的に成立したタクシー特措法に従って、国交省は指導してきたのに、それは何だったんだ。公取委は『安ければ何でもいい。労働基準法を違反しても、事故が起きても安ければよい』という考えなのか。すべてが市場原理で動いてよいのか」と強い憤りを示すとともに、「私は落胆していない。なお頑張らなくてはと思っている。上告することも含めて考えているが、これまで支援していただいた関係者や事業者と相談して決めていきたい」と今後についての意見を述べました。
世論へのアピールが必要
続いて、全日本ハイヤー・タクシー連合会(全タク連)の武井労務委員長があいさつに立ち、「これからタクシー特措法の幅運賃をどう扱っていくのか問題となる。この問題については、労使で議論して少なくとも国に対して言うべきことは言っていかないといけない」と述べた後、「今後、新潟業界でいろんな判断をされると思うが、全タク連としては全面的に新潟業界を応援していく」との全タク連の冨田会長からのコメントを読み上げました。
引き続き、交通労連ハイタク部会の小川部会長から、「まずは、これまで闘ってこられた事業者の努力に敬意を表したい。裁判の結果を聞いて、この問題に対する運動がわれわれの業界内で留まってしまったことに反省している。これからは世間にアピールしていくことが必要だ」と述べました。
最後に、ハイタクフォーラムの伊藤代表(全自交労連委員長)があいさつに立ち、「利用者の安全確保及び労働条件の改善を目的にタクシー特措法が成立した。これで運賃の下限割れが改善されると思っていたが、そのような中で新潟に公取委が横槍を入れてきた。今後、上告も検討するとのことだが、われわれとしては支援していきたい。今回の結果は残念だったが、業界労使が一致団結して闘えたことは意義があった」と述べ、集会を終了しました。
記者会見で争点について弁護士が説明
集会終了後に、労使で合同記者会見を開き、マスコミ各社に判決結果について意見を述べました。
記者会見では、原告側弁護士の西村あさひ法律事務所の宮塚弁護士から判決について説明があり、「判決文については、まだ十分に精査は出来ていないが、裁判で争っていた点は大きく二つあり、『合意の成立があったか。その合意があった場合に独禁法の二条六項の共同して相互に事業活動を拘束するものにあたるか』と『本件の合意が国交省の強い行政指導を受けたものであり、強制された意思決定の自由がない状態であったか』であったが、残念ながら、判決文では基本的に相互に事業活動を拘束する程度の合意があり、独禁法に抵触する。また、強い行政指導についてはわれわれの主張を概ね認めていただいたが、評価については一般的な指導の範囲を超えて強制するものではないとする結論となっている」と争点とそれに対する判決文の内容について述べ、「最終的には、われわれの主張については認められず、請求の棄却となった」と述べました。
まずは全ての関係者に感謝を申し上げたい
次いで、高橋会長が、「判決の内容と、公取委の審決となんら変わらない結論だった。新潟のタクシー業界は競争も激しく、事業者で合意など出来る状況ではな い。また、行政指導に従わないと厳しい監査を受ける訳で、事業者としては強制ではなくても従わざる得ないのであり、状況をまったく理解していない」と争点 に対する見解を述べ、「国交省と公取委で運賃に対する考え方が全く違う。国交省は運賃について適正な水準を保ち、利用者の安全を確保し、労働者の労働条件 を守るべきという考えだが、公取委は下限割れ運賃も立派な運賃で企業努力で安くしているのだという。こういった状況下ではわれわれの主張など聞いてくれな かった。全国のタクシー事業者の皆様や労働組合、弁護士、多くの関係者に感謝したい」と述べました。
質疑に入り、各記者から「今後の裁判について、 どのように考えているのか」、「上告するとしたら、新たな争点はあるのか」と多くの質問があり、高橋会長は、「上告していくべきと考えているが、関係者と 相談して決めていきたい」と回答し、弁護士からは、「上告では法令上主張できることが限られており、上告受理の理由があるかどうかは判決文を精査して決め ていきたい。また、上告では新たな事実を主張し直すことは出来ないため、新たな争点を設けることは出来ない」と回答し、記者会見を終了しました。
なお、今後については判決文を精査し、原告側事業者および弁護士、関係者で上告について検討することとなっています。
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