特区など安易なライドシェアの導入は危険
新経済連盟が提案するシェアリングエコノミーと称した「ライドシェア」について、利用者の安全やタクシー産業を中心とした公共交通に従事する労働者の雇用を脅かす恐れが大きいことを受け、様々な団体や有識者が中心となり「交通の安全と労働を考える市民会議」(ライドシェア問題を考える市民会議)の発足の会が8月5日、東京都千代田区「弁護士会館」で開かれました。
また、連合も6月16日に開いた第9回中央執行委員会で「既存の公共交通で保障されている利用者の安心・安全が確保されない限り、ライドシェアは安易に導入すべきではない」と考え方を示しました。
運送責任を負わないライドシェアに安全・安心は担保できるのか
発足の会には、交通労連からハイタク部会の小川部会長及び手水事務局長が参加。また、交通労連の政策顧問でもある大妻女子大学の戸崎教授をはじめとする有識者や弁護士、消費者代表、連合、交運労協、関係産別などが参加しました。
開会あいさつでは所要で欠席となった代表世話人の一人でもある宮里邦雄弁護士からの、「ライドシェア問題は交通労働に関わる労働者の雇用・労働条件問題であるとともに利用者たる市民、国民にとっては、安全運送にかかわる重大な問題だ」というあいさつ文が読み上げられました。
次いで、戸崎教授がタクシー交通の実情とライドシェア問題について、「タクシーの公共交通の役割が認識されてきた中で、唐突にライドシェア問題が発生してきた。求められるのは安定供給及び安全輸送である。両方ともライドシェアには大きな不安がある。安全輸送の第一の担い手はドライバーだ。また、車両の整備や健康状態を事業者が日々確認することで安全を担保しているが、ライドシェアの場合はドライバーの資質及び運転技術、車両の整備状況などは個人に委ねられている。また、ウーバー社などはドライバーの評価制度などを導入しているから大丈夫と言っているが、それで安全と言える訳でなく、大きな問題があると言わざるを得ない。さらに事故が起きた時にはドライバーと利用者の問題となっており、果たしてドライバーが個人として補償ができるのか。他国の導入事例を鑑みると大きな労働問題や訴訟に繋がっており、それが正しく報道されていない問題もある。何よりも所轄官庁である国土交通省を蔑ろにして議論が進めらるべきではなく、これだけ重要な問題に対して、まったく関係のない官庁や政府の会議だけで進めていくべきではない。是非、この市民会議の場でライドシェアという問題を海外の先行事例も参考にしながら、利用者も含めた関係者で考えていきたい」と述べました。
海外でライドシェア導入後に多くの訴訟が起こされている
続いて、労働政策研究・研修機構の山崎主任調査員からライドシェアや民泊などのシェアリングエコノミーの導入により、これまで築いてきた雇用社会が崩壊し、社会保障の未加入者の増加など大きな社会的問題が浮き彫りになると問題提起を行った後、特区を利用したライドシェア導入に対する兵庫県養父市のこれまでの経過や実情について、全胆バス㈱の村上取締役から報告が行われた。
引き続き、川上弁護士から改めてライドシェアの問題について説明があった後、山口弁護士から市民会議の設立趣旨が述べられ、市民会議の発足を宣言しました。
なお、今後の活動については9月29日に衆議院第二議員会館で院内集会を開くことを予定しており、その後は各地方へ運動を広げていく。
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