運転者不足や運賃制度等を協議
交通労連軌道バス部会は7月1~3日の日程で、第24回目となる全国バス事業労使懇談会を山形市内の「山形国際ホテル」で開きました。
懇談会では、企業側25社、労働側22労組、約80人が参加した懇談会は、高橋副部会長の開会あいさつで始まり、次いで、使用者側を代表して、地元の山交バス㈱の伊藤代表取締役社長があいさつ。
「バス事業を取り巻く環境は燃料価格の問題など様々な課題があるが、やはり安心・安全が第一である。こうした問題には必然的にコストがかかるものであり、現状の状況ではなかなか対応しきれない。さらに運転者不足の問題もあり課題は山積しているが、バス産業の再生に向けて、労使がともに力を合わせ、英知と知恵を出し合い、産業の活性化、発展に向けて、本日の懇談会が有意義なものとなるよう期待したい」と述べました。
これを受けて、労働側を代表して小熊副部会長は、「業界は変わりつつあるがまだまだ課題は多い。こうしたことから、本労使懇談会で討論し、様々な諸課題解決に向けて、どうすべきが、労使で共に取り組むべき課題を模索したい」と挨拶しました。
続いて、日本バス協会の船戸常務理事があいさつ。
「本労使懇談会の議題にも挙がっているが、貸切バスの新運賃・料金制度が昨年導入され、貸切バス業界が変わりつつある。しかしながら、乗合バスも含めて取り組むべき課題は山積している。本日の労使懇談会は、そうした意味では労使が共に話し合い、諸課題解決に向けて非常に有意義なものと思っている。バス協会としても、今後とも協力して取り組んでいきたい」と述べました。
引き続き、懇談会のテーマに沿って、労連の政策顧問である早稲田大学の戸崎教授から講演を受けた。講演で戸崎顧問は、「バス産業を活性化させていくためには様々な対策があるが、人口減少や高齢化の進展の中でいかに移動手段を確保するのか、震災時に見受けられたように、地域を支える交通手段としてのバスの重要性の再認識をさせないといけない。一方で、行政においては様々な政策が打ち出されているが、国任せには限界があり、バス協会や企業、労働組合が積極的に関与していかないといけない」と述べました後、「今回のテーマにもあるように、運転者不足の問題は深刻だ。女性労働者も含めて、若い世代にとって魅力的な仕事にしていかないといけない。今後、バスが生き残っていくためには、女性の活用による業界のイメージの向上、地域に密着したサービスの提供をしていくため、的確な情報集約、そして政治にも積極的に関与して議員も活用しながら取り組まなければならない」と述べました。
新運賃制度の順守徹底を国交省へ訴え
次いで、交通労連軌道バス部会の鎌田事務局長は、この1年間の部会の取り組みと、2016年度の部会の政策要求について説明。
その中で、委員として参画している「貸切バスの新運賃・料金制度ワーキング・グループ」の進捗状況についてもふれ、「制度が導入されてちょうど一年が経過したが、まだまだ周知徹底がされていない。未だ一部の旅行業者が手数料とは別に、協力金という名目でさらなる手数料を強要している。これでは制度の意味が全くない。この辺については交通労連の議員懇談会を通じで国会のなかで問題を提起し、ようやく行政も調査を行うことになったが、旅行業者に対する制度の周知徹底をさらに行わないといけない。その他でも、待機時間の問題や、回送料金のあり方など取り組むべき課題が残されており、今後も適宜開催されるワーキング・グループのなかで訴えていきたい」と述べました。
引き続き、国土交通省自動車局の寺田課長は、全体的なバス産業に係る行政としての施策についてふれたあと、①貸切バスの新運賃・料金制度への対応②運転者不足対策③インバウンド対策④バリアフリーへの対応⑤シェアリングエコノミー――などについて説明しました。
これに対し、「貸切バスの新運賃制度があるが、制度を守らず低料金で行っている事業者がいる。監査してほしいが、本省からも支局に対して指導してほしい」との意見要望が出された。
寺田課長は、「行政としてもそのような要望に対してはきちんと応えていくことで確認している。対応させていただきたい。いずれにしても、様々な課題が山積しているが、今後とも企業側、また労働組合側から現場の声を聞かせていただき、われわれの行政施策に反映させていきたい」と述べました。
これらの報告・講演、さらには事前に挙げたテーマ(運転者不足への対応/貸切バスの新運賃・料金制度施行後の現状と課題)に沿って企業側から報告を受けたあと、全体で討論を行い、盛会裏に終了しました。
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